北海道のアート: 現代と伝統の融合

雪ニセコのアートコレクションは、アイヌの伝統的な芸術作品、北海道の書道家の書、現代彫刻の現代アート、北海道に縁のある芸術作品をホテルデザインののコンセプトとして掲げている「雪月花」を仰ぎ厳選しています。

「雪月花」とは、中国唐王朝時代の詩人「白居易」の詩に由来する言葉で、「雪、月、花があるときに君のことを想う」という四季折々の景色を思わせる詩の世界観から、雪ニセコでは日本のデザインの美しさを表現しています。このコンセプトは、雪ニセコのデザインの基本原則であり、アートワークのキュレーションはこのビジョンの延長にあります。雪ニセコのアートコレクションは、アーティスト達の目を通して、北海道の息を飲むような風景と自然環境を捉えています。

アイヌ工芸品

北海道には、先住民であるアイヌの人々が北の大地で育んだ独特な文様の刺繍や木彫り、工芸品があります。北海道の芸術遺産といえるアイヌの人々の伝統工芸品は、古くは12世紀頃から何世代にも渡って丁寧に受け継がれてきました。

雪ニセコでは、北海道のアイヌ美術の巨匠、貝澤徹氏と貝澤守氏の「二風谷のイタ」（盆）、「トゥキ」（漆塗りの杯）、「イクパスイ」（祭具）などの作品を展示しています。

北海道の書家たち

書道という日本の伝統文化に、北海道の自然、風土、日常からインスピレーションを得て生み出された素晴らしい作品が雪ニセコのコンセプト「雪月花」と融合し、お客様の目を一層に楽しませています。雪ニセコには北海道生まれの才能あふれる2人の書家の作品を所蔵しています。

共和町生まれの久保奈月氏は、現在は札幌を拠点にコンテンポラリーパフォーマンスという枠組みで、書の伝統を生かすため、音/衣/光/食/舞とのコラボレーションを展開し、北海道のみならず米国でも活動を広げ、伝統的な書の芸術を新しいスタイルで追求し続けています。雪ニセコが所蔵する作品は、北海道の何気ない日常や、広大な自然、動物たちからインスパイアされ、北海道の植物から手隙された和紙を使用した作品も含め、北海道のエネルギーを感じられる作品を見ることができます。

倶知安町在住の荒野洋子氏は、書歴60年以上。数えきれないほど多くの作品展を開催してきました。寒い地域でしか表現できない、墨を凍らせて濃淡や模様を生み出す技法に取り組んでいます。自身で調合した墨を使い、豪雪地帯の倶知安町で書に向き合い、この地域でだからこそ創り出せる作品を見ることができます。フロントデスクに大きく飾られている「六花煌」という作品は、降り積もる雪が朝日を浴びて煌めく様子を表現しています。書を愛し、その情熱を年を重ねてなお、力強く、筆を通して表現する作品に出会うことができます。

コンテンポラリー北海道アート

北海道のアートは、近隣国の影響を含め、複雑な文化史も反映されています。現代のアーティストは、これらの文化や自然環境からインスピレーションを得て、北海道の風景をダイナミックに表現する作品を制作しています。

アーティスト名和晃平氏は、仮想空間と物理空間の認識や自然と人工の関係、個人と全体の関係性を探求し続けています。高く評価された《PixCell》シリーズは、グローバリズムと高度情報化の波を受けてスタートし、デジタルカメラのレンズとそれを通して情報化される物体との相互関係を反映しながら、ものの表皮のリアリティを問いかける視触覚的な体験を生み出します。対象となる物体の表面をガラスビーズや透明なプリズムで被膜することによって、さまざまに拡大・歪曲した図像が浮かび上がります。「PixCell」とは「Pixel（画素）」と「Cell（細胞）」を組み合わせた造語です。

名和氏の「PixCell-Deer」はシリーズの代表作のひとつであり、北海道のエゾシカから表現された作品を雪ニセコのメインロビーにてご覧いただけます。

北海道のアートシーンは、島独特の文化史と自然環境を反映し、木工からテキスタイル、現代アートまで、北海道に縁のアーティストはそれぞれの媒体の境界線を押し広げ、革新と伝統が交差する作品を生み出しています。芸術、自然、その両方を好きな人にとって、北海道を訪れる時間は五感に響く体験となるはずです。